本書は全体10章からなる学位論文である。
前編5章は「中国の印章と初期ヤマト王権の形成」について、また後編5章は「日本の印章と国家主権の変遷」について論じており、内容的には「中国の印章」と「日本の印章」の双方を考古学的・歴史学的に扱っている。
久米雅雄 [クメマサオ] 1948年愛媛県に生まれる。1970年立命館大学文学部史学科を卒業。滋賀県文化財保護協会嘱託を経て、79年以降、大阪府教育委員会文化財保護課の専門職員として発掘調査や国宝・重要文化財など美術工芸品の調査、博物館登録審査などを担当。公務のかたわら未開拓の実物による「印章研究」にたずさわる。89年には「中国古印の考古学的研究」で文部省科学研究費をうけ、99年には国立歴史民俗博物館研究部調査協力者として「日本古代印研究」を執筆、さらに研究を深めて、2001年に『日本印章史の研究』にたいして立命館大学から文学博士号を授与された。2003年には国際印学研討会に招待され、研究入選論文の発表を行うとともに、その論文は中国語に翻訳されて『国際印学研討会論文集』に収められている。現在、九州国立博物館常設展示専門委員も務める
前編 中国の印章と初期ヤマト王権の形成(中国古印の考古学―方寸の世界に歴史をよむ;「漢委奴国王」印考―金印奴国説への反論;「親魏倭王」印とその歴史的背景―女王の鬼道と征服戦争;「邸閣督」印考―『魏志倭人伝』に現われたる「邸閣」について;「倭の五王」と将軍章―東アジアの国家秩序をめぐって)
後編 日本の印章と国家主権の変遷(日本古代印研究―その歴史的展開と律令国家の本質;「紀伊国造印」の資料批判;「遣唐使印」考―諸家印譜および実物銅印の研究;「日本国王之印」研究―宋元以来畳篆印との比較研究;「大坂城跡」出土の円形印章について―ある吉利支丹大名の遺産)