技術史学が読み解く「金印」の謎。
「金印」の誕生時空論は、「金印」が何時何処で生まれたかを科学的に明らかにしようとする試みである。
これまでの鑑定結果や先行研究者の尊厳などに対する配慮などからひとまず離れ、「金印」の技術要素・文化要素の一つ一つが、一体何時の時代のどこの地域に存在していたのかを明らかにしていく作業を積み重ねていくことになる。
鈴木勉 [スズキツトム] 1949年、横須賀市生まれ、早稲田大学理工学部卒。工芸文化研究所理事長。橿原考古学研究所共同研究員。早稲田大学大学院文学研究科非常勤講師(金石文学)。早稲田大学奈良美術研究所客員研究員(金工史)。早稲田大学會津八一記念博物館客員研究員(金石文学)
第1章 金印論の整理(「漢委奴國王」金印論争の不可思議;二つの奇蹟;金印論を二つに分ける;戦後の「金印」評価の推移;戦後、何が実証されたか?;「金印」のこれまでの調査)
第2章 光武帝下賜説批判(再録「漢委奴國王印は光武帝が下賜した印か?―廣寮王璽との技術的距離を考える」;三浦佑之氏の『金印偽造事件』から実見調査へ;「漢委倭國王」金印調査報告;光武帝下賜説批判ふたたび)
第3章 金印誕生時空論とその準備(技術史研究の必要性;史料的信頼性の問題)
第4章 金属製印章の技術史学(技術移転論に基づく金属製印章の調査;中国の博物館の金属製印章;国内に現存する中国古代金属製印章;江戸時代の金属製印章;各時代の金属製印章の技術;金属製印章の技術史学;「漢委奴國王」金印の誕生時空論)
第5章 金属製印章の技術史学のために(鑑識眼から誕生時空論へ;文化と技術の時空図;自然科学的アプローチの限界と可能性;西川寧氏の意思;『金印偽造事件』その後)
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