明治43(1910)年、甲州の片田舎で親に見捨てられ、親族を転々として育った青年が大志を抱き、東京へ出る。
やがて青年は大正5(1916)年、歴史書を中心に書道、刀剣など文化学術書籍を専門に扱う出版社「雄山閣」を創業。その灯は代々、家族、そして日本文化を愛する編集者、著者によって受け継がれてゆく――
関東大震災、昭和モダニズム、太平洋戦争、高度成長、バブル崩壊…激動する社会の荒波に翻弄され、幾度も倒産の危機に直面しながらもいぶし銀のような本を世に問い、文化の灯を守り続けて来た小出版社、百年の物語。
西端真矢(にしはたまや)
文筆家。1970年生まれ。東京都出身。93年上智大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション、広告代理店勤務を経て、2007年独立。『婦人画報』『JAL SKYWARD』『DUNE』誌などにて、取材記事や随筆を多数執筆。また、着物にも造詣が深く、専門誌『美しいキモノ』『いろはにキモノ』や『クロワッサン』の長寿連載「着物の時間」で、日本染織文化関連の記事を多数取材、執筆している。
序 章 富 士
第一章 薄幸の子
第二章 小坊主修行
第三章 立 志
第四章 出世双六
第五章 歴史という商売
第六章 地の揺れ
第七章 躍進の時
第八章 黄金時代
第九章 戦 禍
第十章 挫 折
第十一章 再 起
第十二章 野武士登場
第十三章 新しい血
第十四章 書道復活
第十五章 光と闇
第十六章 落日前の輝き
第十七章 バブル崩壊
第十八章 屋 号
第十九章 使 命
終 章 富士、再び