「木」の刻書・墨書文字、文献史料の「八」、東北地方の遠賀川系壺、×型文図像、秋田城跡の龍絵塼と人物絵塼、西王母の髪飾り、鴟尾瓦の変遷、三足烏と鳳凰、亀趺碑などの造形物から、道教的信仰、神仙思想の心性を読み解く「心象考古学」の試み!!
利部 修(かがぶ おさむ Kagabu Osamu)
195 年秋田県に生まれる。
1978 年駒澤大学文学部歴史学科(考古学専攻)卒業。
198 3 年立正大学大学院文学研究科修士課程(史学専攻)修了。
1985 年より秋田県埋蔵文化財センターに勤務、同センター南調査課長を経て、現在、
中央調査班文化財主査。
《主要著書》
『出羽の古代土器』同成社 2008 年
『長崎・松浦皿山窯跡』先史15 駒澤大学考古学研究室(共著) 198 1 年
「北日本の須恵器についての一考察」『考古学の諸相』坂詰秀一先生還暦記念会 1996 年
「平安時代東北の長頸瓶」『生産の考古学』同成社 1997 年
「虚空蔵大台滝遺跡の呪術・祭祀・信仰―平安時代後半と中世後葉の心象風景―」『生産の考古学 Ⅱ』倉田芳郎先生追悼論文集編集委員会編 2008 年
「古代土器の製作過程と技法の表記」『研究紀要』第31 号 秋田県埋蔵文化財センター 2017年 など
「心象考古学」の試み
︱造形物の心性を読み解く︱
目次
序 立正大学名誉教授 坂詰秀一
序 章 心象考古学の構想
一 歴史考古学と時代区分
二 人類の考古学的段階区分
三 心象文化領域
第一章 北辺日本の諸相―本州北端の刻書土器―
第一節 道教的信仰から見た「木」の考察
一 はじめに
二 厨川谷地遺跡と道教的信仰
三 「木」の刻書・墨書文字
四 五行説の「木」
五 道教的信仰の展開
六 おわりに
第二節 数字様記号について
一 はじめに
二 数字様記号の出土状況―長内論文より―
三 刻書「+」の解釈
(1)前提
(2)組み合わせ文字と単一文字
四 刻書「」「」「」の解釈
(1)文書と数字
(2)組み合わせ文字の検討
(3)単一文字の検討
五 刻書「」「」「」の解釈
六 おわりに
第三節 「八」の基礎的考察
一 はじめに
二 考古・建築資料と伝世資料の事例
(1)考古・建築資料
(2)伝世資料
三 文献史料の「八」
(1)『古事記』に見える「八」
(2)制度に見える「八」
四 「八」の思想的背景
(1)天武天皇と道教的信仰
(2)中国思想と「八」
五 おわりに
第四節 北方域の研究史と系譜
一 はじめに
二 日本列島北域の刻書土器研究
(1)土師器・須恵器
(2)擦文土器
三 刻書「」の検討
四 刻書「」の出自と系譜
五 おわりに
第二章 東西日本の交流
第一節 東北地方の遠賀川系壺―地蔵田B遺跡と館の上遺跡を中心に―
二 東北北部における研究の歩み
三 壺の分類とその広がり
(1)壺の形態
(2)文様による分類
(3)文様の基本分類の類例
四 文様の系譜
五 おわりに
第二節 日本列島の×形文図像―本州北端域を意識して―
一 はじめに
二 ×形文を含む刻書土器論
三 日本列島の×形文
(1)縄文・弥生時代
(2)古代
四 おわりに
第三節 秋田城跡出土の龍絵塼と人物絵塼の評価
一 はじめに
二 龍について
三 秋田城跡の井戸とその立地
四 龍絵と人物絵
(1)龍絵塼
(2)人物絵塼
(3)龍と弓の共存
五 おわりに
第四節 三巴文の概要と展開―瓦当文と図像の検討から―
一 はじめに
二 三巴文瓦の発生と拡散
三 図像に見える三巴文
(1)三巴文の民俗例
(2)三巴文と絵画
四 一二世紀三巴文の様相
(1)変換期の三巴文瓦
(2)『源氏物語絵巻』と平家納経に見る三巴文
五 『往生要集』に見る三巴文図案の背景
六 おわりに
第三章 東アジアと日本
第一節 古代西王母の髪飾り―その変遷と思想に関する問題―
一 はじめに
二 西王母髪飾りの前提
三 西王母髪飾りの変遷
四 Ⅰ字形タイプの勝
五 玉勝形タイプの端飾り
(1)発生・変容
(2)残映のこと
六 おわりに
第二節 鴟尾の変遷と発生に関する問題
一 はじめに
二 鴟尾出現前史
(1)漢代の検討
(2)三国・晋時代の検討
三 鴟尾の変遷
(1)北魏の様相
(2)鴟尾の分類
四 鴟尾の発生
(1)鴟尾の名称について
(2)鴟尾発生の契機
五 おわりに
第三節 日本の神仙思想と道教的信仰―烏・鳳凰・朱雀―
一 はじめに·
二 日中神仙思想の素描
三 三足烏と鳳凰
(1)古代日中韓の三足烏
(2)鳳凰図像の変遷
四 白雉と朱鳥
五 おわりに
第四節 亀趺碑の発祥と伝播に関する試論
一 はじめに
二 亀趺碑発祥期の研究略史
三 亀趺碑と神仙思想
(1)龍と神仙思想
(2)神仙思想と道教
四 亀趺碑の日本への伝播
五 おわりに
[初出一覧]
あとがき