山岳霊場は、日本の宗教のあり方を示す紀念物であり、日本人の精神を知るまたとない手がかりである。
本書は、考古学の立場から、その実態に迫る研究であり、日本の宗教を考える多くの読者に届けたい一書である。
時枝 務(ときえだ つとむ)
1958年群馬県生まれ
立正大学大学院修士課程修了
現在、立正大学文学部教授
〈主要編著・著書〉
『修験道の考古学的研究』(2005年、雄山閣)
『山岳考古学―山岳遺跡研究の動向と課題』(2011年、ニューサイエンス社)
『霊場の考古学』(2014年、高志書院)
『山岳宗教遺跡の研究』(2016年、岩田書院)
はしがき
第Ⅰ部 山岳霊場概観
第1章 山岳宗教の歴史
霊山と修験道/山岳信仰の源流/霊山の誕生/山林仏教と山寺/霊山への登拝/霊山と山岳修行/修験道教団の形成/江戸時代の霊山と里修験の活動/霊山・修験道の伝統
第2章 修験道の考古学
修験道考古学の視点/修験道考古学の対象/修験道遺跡・遺物の変遷/中世修験の遺跡/山岳修行の遺跡
第3章 「霊場の考古学」の現状と課題
はじめに/霊場とはなにか/中世史からの問題提起/「霊場の考古学」の提唱と実践/「霊場の考古学」の課題/おわりに
第Ⅱ部 山岳宗教の考古学
第4章 考古学からみた羽黒修験
はじめに/御手洗池の羽黒鏡/山岳寺院としての羽黒山/行場遺跡の語り
第5章 日光男体山頂遺跡出土遺物の性格―新資料を中心として―
はじめに/新資料の紹介/新資料の検討
第6章 草津白根山信仰の展開
草津白根山への誘い/白根明神/山岳修験の活動/血盆経信仰と湯釜
第7章 山岳宗教としての富士山
富士山の山岳宗教の成立/富士禅定の盛行/富士信仰の近世的展開/富士信仰の伝統
第8章 苗敷山信仰の諸段階
はじめに/苗敷山信仰の考古学研究史/苗敷山の立地/平安時代における山岳宗教の問題/中世の様相/宝生寺の宗教活動/おわりに
第9章 妙高山信仰の諸段階
はじめに/第一段階:妙高山信仰胎動期/第二段階:妙高山信仰成立期/第三段階:妙高山信仰発展期/第四段階:妙高山信仰衰退期/おわりに
第10章 立山信仰の諸段階―日光男体山・白山との比較のなかで―
はじめに/立山信仰の開始時期/一〇世紀の問題/山岳登拝行の成立/一五世紀と一七世紀の画期/おわりに
第11章 宝満山の懸仏
はじめに/懸仏の形態と製作技法/懸仏の製作時期/懸仏の性格/おわりに
第Ⅲ部 霊場の考古学
第12章 在地霊場論
はじめに/霊場と聖地の識別/在地域霊場の種類/成立時期と性格/在地霊場と地域社会/おわりに
第13章 立石寺の金工資料
はじめに/「立石倉印」の性格/如法経碑と経塚/懸仏/池中の鏡/在地産の鉄鉢/おわりに
第14章 中世都市と納骨霊場―神奈川県鎌倉市長谷寺を事例に―
はじめに/長谷寺の納骨遺構/墨書された火葬骨/おわりに
第15章 霊山金峯山と霊場熊野―その成立と展開
はじめに/大峰山頂遺跡と金峯山経塚/奥駈道の成立/熊野の霊場遺跡/おわりに
第16章 六郷山の山岳遺跡研究序説
はじめに/山岳遺跡とはなにか/六郷山における資源と土地の利用/六郷山の自然と宗教/おわりに
第17章 霊場研究のなかの納骨信仰遺跡
納骨信仰と霊場/納骨をめぐる霊魂と肉体/納骨霊場の成立と宗教家/なぜ霊場に納骨するのか
あとがき/参考文献/初出一覧