西日本で水田稲作が始まった弥生時代のはじめ、東北北部では縄文晩期の亀ヶ岡文化が栄えていた。
本書では土器文化・居住・交易の三つの観点から、縄文晩期の文化および社会が弥生時代のものへと移行した過程について論じ、「縄文/弥生移行期」における地域的特質を明らかにする。
筆者が実際に関わった遺跡発掘調査の成果と共に、豊富な遺跡・遺構の集成図表を収録。
根岸 洋(ねぎし よう)
東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻考古学専門分野修士課程 修了、博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。国際教養大学国際教養学部准教授。アジア地域研究連携機構副機構長。
序論
第1章 東北北部における縄文/弥生移行期論の枠組み
第1節 はじめに
第2節 東北地方北部における縄文/弥生移行期の定義
第3節 伝播論から広域交流モデルへ
第4節 おわりに
第2章 亀ヶ岡社会の変質と移行期論の射程
第1節 縄文晩期の停滞論
第2節 亀ヶ岡社会論のゆくえ
1 林謙作による内在的変質論/2 弥生時代研究の視点
第3節 本書の狙い
第Ⅰ部 土器文化の移行
第3章 東北北部における「遠賀川系土器」の再検討
第1節 問題の所在
第2節 「遠賀川系土器」をめぐる研究史
第3節 類遠賀川系土器の編年
第4節 受容のあり方にみる地域性
第5節 類遠賀川系土器と土器棺葬
第6節 総括
第4章 砂沢式土器の研究
第1節 問題の所在
第2節 研究史
第3節 津軽地域における砂沢式土器の細別
第4 節 砂沢式土器の波及
第5節 五所式土器の再検討
第6節 総括
第5章 二枚橋式土器の研究
第1節 問題の所在
第2節 二枚橋(1)遺跡の発掘調査成果
第3節 二枚橋式土器の編年
第4節 他地域との併行関係
第5節 二枚橋式が与えた影響
第Ⅱ部 居住システムの移行
第6 章 縄文/弥生移行期の居住システムをめぐる言説とその年代
第1節 問題の所在
第2節 縄文晩期集落論に関する研究史
第3節 弥生集落論の研究史
第4節 東北地方北部における縄文/弥生移行期の測定年代
第5節 総括
第7章 大型住居跡からみる縄文/弥生移行期の継続性
第1節 問題の所在
第2節 住居跡の規模
第3節 縄文時代晩期後葉の大型住居跡
第4節 弥生時代との継続性
第5節 考察
第8章 遺跡群動態から見た居住形態の移行
第1節 はじめに
第2節 遺跡群と地理的環境
第3節 遺跡群動態の検討
第4節 集落配置と居住集団の動態
第5節 総括
第9章 縄文/弥生移行期の集住システムとその背景
第1節 はじめに
第2節 馬淵川・新井田川流域の分析
第3節 縄文晩期の大型竪穴住居跡
第4節 縄文/弥生移行期における溝跡の再評価
第5節 総括
第Ⅲ部 交易システムの移行
第10章 赤色顔料利用形態からみる交易システムの移行
第1節 問題の所在
第2節 縄文晩期のベンガラ
第3節 縄文時代後期・晩期の朱
第4節 弥生時代の赤色顔料利用形態
第5節 まとめと考察
第11章 東北北部における碧玉製管玉
第1節 研究史と問題の所在
第2節 帰属時期に関する検討
第3節 法量に関する検討
第4節 考察
総論
第1節 はじめに
第2節 土器文化の移行
第3節 居住システムの移行
第4節 交易システムの移行
第5節 おわりに
おわりに/図版典拠/引用文献/附篇