地裁・高裁・最高裁とあしかけ8年もの間、争われたいわゆる「群馬の森朝鮮人追悼碑」裁判の問題点をわかりやすく解説。さらにその背景にある歴史修正主義的風潮への警鐘とともに、より積極的な議論を促すための有意義な書である。
……この裁判は、非常に多くの問題点を含んでおり、社会的にも、歴史的にも、法的にもきわめて注目に値するものですが、マスメディアでは単に裁判の概略が報道されているにとどまり、いまだ広く人びとの関心を集めるものとはなっていません。(中略)裁判所の判決文は抽象的で難解なので一読しただけではなかなかその内容を理解できませんので、僭越ながら不肖・私が理解の助けとなるように不十分ながらもコメントを付けさせて頂きました。(「はじめに」より)
藤井 正希(ふじい まさき)
出身 群馬県
1996年 早稲田大学大学院法学研究科/修士(法学)
2008年 早稲田大学大学院社会科学研究科/博士(学術)
群馬大学情報学部准教授
専門分野 憲法学
主な編著 『行政救済法論』(共著・2015年)、『マスメディア規制の憲法理論』(2016年)、『人権保障と国家機能の再考―憲法重要問題の研究』(共著・2020年)、『はじめの一歩 法学・憲法』(共著・2020年)、『憲法口話』(2020年)、『公法・人権理論の再構成(後藤光男先生古稀祝賀)』(共編・2021年)、『現代行政法25講』(共著・2022年)など。
はじめに―本書の目的・意図―
第1章 群馬の森公園とは?
第2章 追悼碑設置の経緯
第3章 追悼碑が紛争の種に!?
第4章 法廷での争い
(1)前橋地裁判決の検証――守る会の一部勝訴
㋐「政治的発言」「政治的行事」はあったのか?
㋑「公園施設」でなくなるのか?
(2)東京高裁判決の検証――県の全面勝訴
㋐「政治的発言」「政治的行事」はあったのか?
㋑「公園施設」でなくなるのか?
〈Ⅰ〉「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)
〈Ⅱ〉日朝平壌宣言
(3)前橋地裁と東京高裁の考え方の違いのポイント
第5章 東京高裁判決の背後にある基本思想――歴史修正主義
① 奈良県天理市、柳本飛行場・朝鮮人強制連行の説明板問題
② 福岡県飯塚市、飯塚霊園内・朝鮮人追悼碑問題
③ 大阪府茨木市、戦争の傷あと銘板問題
④ 長崎県長崎市、長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑と説明板問題
⑤ 国際問題にも発展していること
第6章 表現の自由論
① 「思想の自由市場」論
② パブリック・フォーラム論
③ 敵意ある聴衆の法理
第7章 〝政治的中立性〟とは?
第8章 「強制連行」「強制労働」「従軍慰安婦」は事実か?
第9章 東京都立横網町公園にある朝鮮人犠牲者追悼碑の場合
第10章 歴史の検証とは?
第11章 〝いきなりの死刑宣告〟――適正手続の原則の観点
第12章 歴史修正主義に抗する!
※参考文献一覧
資料編
① 訴状
② 意見書(藤井作成)
③ 第一審・前橋地裁判決
④ 第二審・東京高裁判決
⑤ 上告審・最高裁決定