釈迦最期の時、涅槃の場で語られる仏教の未来図
釈迦入滅後の破戒比丘たちの出現と教団の危機、フン族王ミヒラクラ(蓮華面)によるガンダーラ仏教への弾圧と破壊の地獄絵を予言する経典全文を初めて現代語に翻訳する。
「蓮華面経」とは――
二巻。仏が三月後に入滅することを阿難(あなん)に告げた後、仏滅後の未来の世界を描写する経典。阿輸迦(アショーカ)王が八万四千の塔を建立すること、破戒の比丘・比丘尼が現れ、蓄財し、非梵行を行い、阿羅漢を詐称し、殺生を行い、ついには仏法を毀滅すること、罽賓国(けいひんこく)の阿羅漢が十二部経を編纂し、諸論を造ること、蓮華面という名の冨蘭那外道(ふらんなげどう)の弟子が仏法を破壊することを願い、未来世に国王に生まれ変わって仏鉢を破砕するので仏法が衰えること、破砕された仏鉢は北方へと伝えられ、人びとに供養され、再び仏法が起こること、しかし遂に仏法は地を払い、仏鉢は弥勒仏(みろくぶつ)の出現まで婆伽(しゃか)竜王の宮中に保持されることなどが説かれる。ここにはいわゆる仏教の末法史観と未来仏思想とが説かれているが、それにとどまらず、この経典の描写がフン族の侵入という歴史的事実に支えられたものであることが山田龍城によって指摘されている。
※弊社刊「大蔵経全解説大事典」より抜粋
仁科 龍(にしな りゅう)
1940 年(昭和15)新潟に生まれる。本名・松浦龍夫。
早稲田大学文学部卒。作家・評論家。
著書:『親鸞の妻・恵信尼』(共著・雄山閣)
『歎異抄入門』(雄山閣)
『親鸞辞典』(分担執筆・東京堂出版)
『親鸞講座』全三巻(日本カルチャー協会)
詩集:『くもりガラスの時』(獏出版)ほか。
評論:「ウイグルの詩人キキ」
「カシミールの詩人ビルハナ」
「仏教詩人アシュヴァゴーシャ」
「シルクロード変相」
「ドラキュラ伯爵の周辺」
「アメリカン・ドリーム」ほか多数。
現代語訳 蓮華面経(仁科 龍・訳)
解題とその概要
蓮華面経(現代語訳本文)
上巻
下巻
語句の解説
解 説
経典のテキストについて
翻訳者・那連提耶舎のこと
蓮華面・ミヒラクラのこと
仏僧・宋雲ミヒラクラと会う
経典の成立
経典の語るもの
経典の作者は?―仮説―
《参考》現代語訳 法滅尽経
追記―ミヒラクラに関する別伝
『蓮華面経』のその後
おわりに
参考文献
漢訳原典 蓮華面経 巻上・下巻(那連提耶舎・訳)