弓射という運動文化の歩んできた歴史――
狩猟具としての弓矢の誕生から、中国の弓射思想の影響を受けつつも独自の発展を遂げた宮廷儀礼としての弓射様式の展開、武家社会における戦闘行為としての弓射儀礼の成立、弓術流派の誕生まで。
入江 康平[いりえ こうへい]
1939年徳島県生まれ。東京教育大学体育学専攻科修了。筑波大学教授を経て、現在同学名誉教授。
日本武道学会顧問、大倉精神文化研究所客員研究員・評議委員。弓道教士。
主要編著に『日本武道大系』全10巻、『日本の武道』全16巻、『弓道書総覧』、『武道伝書集成』全10巻、『弓道資料集』全17巻、『近世武道文献目録』、『武道日本史小百科』、『弓道指導の理論と実践』、『近代弓道書選集』全9巻、『武道文化の探究』ほかがある。
はじめに
序 章
第一節 武道関係用語考
一 戦・争・戦争・軍
二 兵・兵法・兵器
三 武・武術・武技・武芸・武器・武道
四 (武)道場・神棚
第二節 弓道関係用語考
一 弓・矢
二 射・弓術・弓道・的
第三節 武器としての弓矢とその意義
一 武器と兵器
二 近接用武器と遠距離用武器
第一章 原始時代
第一節 原始時代の弓射
一 原始時代の人々の暮らし
二 狩猟具・武器の工夫
三 弓矢の誕生
第二節 人類の戦いの歴史
一 戦いの原点
二 原始時代における人々の生活
三 原始時代の戦いの様相
四 原始時代の武器
第三節 原始時代の弓具
一 弓体の概要
二 縄文・弥生時代の弓矢
三 弥生時代の武器―金属文化と稲作文化の伝来と普及―
四 弥生時代の弓具の例
第四節 射法の分類とわが国の射法
一 射法のさまざま
二 わが国の射法
三 弓矢の威力
四 毒矢について
第二章 古 代
第一節 古代の武器
一 国風文化と弓・刀
二 日本人の武器に対する信仰
第二節 古代の弓具
一 弓
二 弩
三 矢
四 矢入れ具
五 弽
六 鞆
七 的
八 稽古場・競技場施設について
第三節 神話の中の弓矢
一『記・紀』と弓矢
二 武威の象徴としての弓矢
第四節 古代の射法―取懸け法について
一 取懸け法のさまざま
二 取懸け法の相違と弓矢の位置関係
三 わが国の取懸け法
四 わが国古代の射法・射術
第五節 古代における弓射流派の特性
一 古代における弓射故実の家柄
二 歩射儀礼の展開
三 士の素養としての弓射
四 破邪としての弓射
第六節 朝廷儀礼式としての歩・騎射
一 歩射の儀礼式
二 騎射の儀礼式
三 古代における騎射戦の様相
第三章 中 世
第一節 武器と武具
一 武器
二 武具(防禦具)
三 中世の武術界―流派の誕生―
第二節 弓具
一 弓
二 弓胎入り弓の製作工程
三 矢の製作工程
四 弽
第三節 儀礼の射
一 歩射式
二 騎射式
三 騎射の三つ物の特徴
第四節 堂射
一 堂射の概要
二 堂射の歴史
第五節 射法・射術の様相
一 射法・射術の変化―『了俊大草紙』を中心に考える―
二 絵図や文献にみる射法・射術
第六節 戦場における弓矢の有効性
一 鑓・太刀の効用
二 弓矢の有効性―鉄砲との比較において―
三 弓矢の武器としての有効性の具体例
四 弓矢と鉄砲の武器としての比較
五 武器としての弓矢に対する心情
第七節 元寇にみる彼我の戦法と弓射
一 戦法の相違と弓射
二 モンゴル兵の弓射とその威力
第八節 弓術流派を考える
一 武術流派について
二 弓術流派の二つの性格―実利の射と儀礼の射―
三 弓術流派に関する先行文献
四 弓術(武術) 流派の伝授方式の確立
第九節 弓術流派の発生・成立と分派活動
一 実利の射日置流の誕生―日置弾正正次の登場―
二 日置正次の功績
三 日置流の分流分派活動
四 日置正次の参籠開眼について―悪魔・霊夢・修験者・天狗―
五 武術界における参籠開眼
六 吉田流の誕生
七 佐々木義賢の吉田流への介入問題
八 道統における〝代〟と〝世〟について
九 日置流諸派の展開
第十節 儀礼射の意義とその道統
一 わが国における「礼」の意義
二 わが国における故実の動向―弓馬故実の誕生―
三 鎌倉時代の弓馬儀礼式を司る家柄
四 室町時代における弓馬儀礼式を司る家柄の誕生
主な引用・参考文献