あらゆるフォークロアが合流して生まれた「漢字」それを「書す」という行為の本質的な意味を探ると同時に、古来の「契り」のかたちを「習俗」「歴史」「文化」「思想」と照合し、その営みの中で産み出された「書論」の検証を通して、現代社会の方向性を探る。
大きな視座で漢字文明の真髄と意義を世に問う。
松宮貴之 (まつみや たかゆき)
1971年生まれ 作家、書家。
東京学芸大学教育学部芸術課程書道科卒。
文学修士(二松学舍大学)
教育学修士(東京学芸大学)
学術博士(総合研究大学院大学)
大阪大学非常勤講師
佛教大学、四国大学大学院非常勤講師
《主要著書》
『書と思想』(東方書店 2019年)、『書人 郭沫若』(武蔵野書院 2024年)
《主要論文》
「徐渭の東京国立博物館蔵「花卉雑画巻」山査詩図についての書論史的一考察―画と書の表象、「諦観」と「怨嗟」の意味を巡って」『MUSEUM』(東京国立博物
館研究誌) 第702号、「董其昌の禅と宋明理学の構造」(『禅文化研究所紀要』第37号)
序 章 そもそも書とは何なのか
第一部 習俗書史
第一章 書論前史の墨について―墨刑という視座から―
第二章 『説文解字叙』批判―三段文字史観と甲骨文の爻と易―
第三章 爻の原義解釈と婚姻論―契りの文化人類学―
第四章 筆の形而上学―「聿」形を要素とする文字の再考とその語力―
第五章 結びと書
第二部 書論の誕生と展開
第六章 書論の起源―古代書論のアイデンティティー―
第七章 書体論の確立とその秘境
第八章 王羲之書論系統と中世支配
第三部 近世書論と思想
第九章 近世書論の条件
第十章 近世書論に於ける王羲之観の再編
第十一章 董其昌に於ける陽明学と禅理解に基づく書画論に就いての考察―文人史観の展開―
第十二章 董其昌の書画と禅及び浄土教―思想・宗教化する文人史観―
第十三章 貶南尚北の美学
第四部 近代日本の書論とその構造
第十四章 「菩薩処胎経」の書道思想
第十五章 「近代」と清浦奎吾の王朝書学―清浦の勤王書学と昭和王政復古の基礎研究―