遺跡から出土する陶磁器は歴史資料「考古学陶磁器」として、遺跡との関係で地域・時代・階層の情報をその身にまとう。
本書はそれら資料に基づいた多様な研究法と新鮮な論点から語られる生活文化史のシリーズ第八巻である。
編者紹介
佐々木達夫(ささき たつお)
1945年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科考古学専門課程博士課程単位取得退学。金沢大学教授、同学評議員・埋蔵文化財調査センター長を経て、現在、金沢大学名誉教授、古代学協会理事、日本考古学会評議員、石川県埋蔵文化財センター評議員。文学博士。
[主要著書]
『元明時代窯業史研究』(吉川弘文館 1985)、『畑ノ原窯跡』(波佐見町教育委員会 1988)、『日本史小百科・陶磁』(東京堂出版 1994)、『陶磁器、海をゆく』(増進会出版社 1999)、『ペルシア湾と紅海の都市遺跡比較から見る古代海上貿易史研究』(金沢大学 2004)、『九谷A遺跡範囲確認調査報告書』(加賀市教育委員会 2005)、『タニ窯跡の研究―カンボジアにおける古窯の調査―』(連合出版 2007)、『地域社会の文化遺産から探るイスラーム陶器の文化的変遷』(金沢大学 2008)、『シャルジャ、砂漠と海の文明交流』(シャルジャ展日本開催委員会 2010)、『中国陶磁 元青花の研究』(編著 高志書院 2015)、『中近世陶磁器の考古学 第一巻~第七巻』(編著 雄山閣 2015 ~ 2017)ほか多数。
まえがき(佐々木達夫)
景徳鎮調合原料の成形性不良と胴継ぎ技法の始まり(水上和則)
はじめに
1.原料枯渇の鉱山と残された原料の再利用の方法
2.セリサイトが粘りカオリンが粘らない理由について
3.景徳鎮生産瓷器の胎土分析から
4.胴継ぎ技法とは
5.胴継ぎによる生産の意図は、何処にあったのであろうか
まとめ
明清時代に西洋画法が景徳鎮青花画法に与えた影響(陳 殿)
はじめに
1.明代末期
2.順治~雍正期
3.乾隆期
まとめ
異境の日本窯―「 倭館窯」の成立と展開を巡る試論 ―(片山まび)
はじめに
1.三浦倭館と陶磁器生産―薺浦倭館・釜山浦倭館を中心に―
2.豆毛浦倭館窯の成立と展開
おわりに
磁器の流通と消費のグローバル化(野上建紀)
はじめに―磁器の流通・消費に関する二つのグローバル化
1.陶磁の道
2.旧大陸から新大陸へ
3.嗜好品の普及と磁器
4.日本磁器の創始と発展
5.磁器使用の国内普及と波佐見焼
6.地方窯の成立
7.展海令以後の中国磁器
8.工業製品としての磁器
9. 磁器の流通・使用のグローバル化の画期
おわりに
沈没船遺跡にみる陶磁器の梱包と積載(木村 淳)
はじめに
1.輸送遺跡としての沈没船遺跡
2.東南アジア海域の沈没船遺跡様相
3.北東アジア海域商船の船体構造
4.出土船体で確認される陶磁器梱包の事例
5.陶磁器の積載方法
おわりに―沈没船遺跡に確認される梱包と積載の様相
京都府北部中世前期の土器・陶磁器― 流通の中継地点と荘園館 ―(伊野近富)
はじめに
1.大内城跡
2.大川遺跡
3.貿易陶磁器出土傾向の4様相
おわりに
「桃山陶器」流行年代考(尾野善裕・平尾政幸)
はじめに
1.中之町出土の「桃山陶器」をめぐる研究史
2.「桃山陶器」の廃棄年代
3.「桃山陶器」の廃棄要因
4.元屋敷窯の操業年代
5.鍋島勝茂書状の評価
6.古田織部と織部焼
おわりに
京都における磁器生産の始まりをめぐって― 欽古堂亀祐の陶業を中心に ―(畑中英二)
はじめに―問題の所在と本稿の目的
1.三田窯と亀祐の土型
2.亀祐の動向に関する検討
3.京都における磁器生産の始まりと亀祐
おわりに―今後の課題
今井焼における考古学的検証(青木 修)
はじめに
1.今井焼の伝世品
2.窯跡採集資料
3.今井焼の検証結果
近世後半から近代の石見焼(榊原博英)
はじめに
1.窯跡の分布と石見焼の概要
2.石見焼と須佐焼
3.石見焼の連房式登窯と窯道具
4.石見焼の成立と流通
おわりに
越後産焼酎徳利(「松前徳利」)の生産と流通(関根達人・木戸奈央子
はじめに
1.生産地の様相
2.分類と編年
3.焼酎徳利の流通
おわりに
ベトナム産タイルとペルシャタイル(坂井 隆)
はじめに
1.ジャワ島のベトナム産タイル
2.ハノイ、タンロンでの発見
3.トゥルケスタンのアフマッド・ヤサウィ廟
おわりに
タンザニア・キルワ遺跡出土の元染― 大航海時代のラマ式蓮弁文 ―(鈴木重治)
はじめに
1.タンザニア・キルワ遺跡出土の元末・明初青花磁器の確認
2.陶磁考古学の展開と元末・明初の青花磁器への関心
3.日本・中国出土のラマ式蓮弁文の比較検討
おわりに