自然の回復力と吸収力を活用すること
2011年3月11日。豊かな生態系を持つ広田湾は、大地震とそれに伴う大津波に襲われた。
著者による「森川海と人プロジェクト」では、広田湾に注ぐ気仙川流域の陸・海洋生態系調査を継続して行い、復興事業が自然生態系にどのような影響を与え、どのような変化を見せるのかを調査・研究している。
本プロジェクトによる長期間の現地調査に加え、海外研究機関の取り組みを報告・分析。世界的視座から、日本の自然環境保護を見渡す。
小松 正之(こまつ まさゆき)
東京財団上席研究員、一般社団法人生態系総合研究所代表理事、アジア成長研究所客員教授。1984年米イェール大学経営学大学院卒。経営学修士(MBA)、2004年東京大学農学博士号取得。
1977年農林水産省に入省し水産庁に配属。資源管理部参事官、漁場資源課課長等、政策研究大学院大学教授を歴任。国際捕鯨委員会、ワシントン条約、国連食糧農業機関(FAO)などの国際会議、米国司法省行政裁判や国際海洋法裁判所、国連海洋法仲裁裁判所の裁判に出席。FAO水産委員会議長、インド洋マグロ委員会議長、在イタリア日本大使館一等書記官、内閣府規制改革委員会専門委員を務める。日本経済調査協議会「第二次産業改革委員会」主査を務める。
『築地から豊洲へ』(成山堂刊)、『宮本常一とクジラ』『豊かな東京湾』『東京湾再生計画』『日本人とくじら 歴史と文化 増補版』(雄山閣刊)など、著書多数。
望月 賢二(もちづき けんじ)
1971年東京大学農学部水産学科卒、1977年東京大学大学院農学系研究科水産学専門課程博士課程修了。農学博士。東京大学総合研究資料館(現・博物館)文部教官助手、千葉県立中央博物館の自然史歴史研究部長・分館海の博物館長を経て、2005年副館長で退職。水産庁希少水生生物保存対策試験事業海産魚類部会委員、環境庁自然環境保全基礎調査検討会身近な生き物分科会委員。千葉県環境調整検討委員会委員、市川二期・京葉港二期計画に関わる補足調査専門委員会委員長、三番瀬再生計画検討会議専門委員、一宮川および夷隅川の流域委員会委員。東京都葛西臨海水族園運営委員、浦安市環境審議会委員などを歴任。
主な著書に『日本産魚類大図鑑』(東海大学出版会・分担執筆)、『日本の希少淡水魚の現状と系統保存』(緑書房・分担執筆)、『東京湾再生計画』(雄山閣・分担執筆)など。
【序 章】 直面している地球環境問題
地球環境の異変/経済成長と自然破壊/水や空気はかけ替えのない地球の生産物/変化が激しい海洋生態系 ほか
【第Ⅰ章】 地球環境の劣化と人間の功罪
日本人は自然の破壊者か/豊かな魚食を求めて北海道へ/大局観が不足の日本人/気仙地方と種山高原と宮澤賢治
【第Ⅱ章】 気仙川・広田湾調査の意義と概要
広田湾気仙川の変化と現状/気仙川・広田湾調査の目的について/二〇一八年一一月までの調査結果/これまでのフィールドワーク ほか
【第Ⅲ章】 日本の陸上・海洋生態系の現状と課題
はじめに/現代日本の生態系の現状と課題/日本の水域生態系の現状と課題―サケ、ウナギを例にして―/今後に向けて
【第Ⅳ章】 海外研究機関に学ぶ
ニュージーランド環境省/オタゴ大学/オーストラリア環境省/グレートバリアリーフ海洋公園局/オーストラリアの取り組みから
スミソニアン環境研究所SERC/河川周辺の森林の窒素吸収プロジェクト/NOAA(海洋大気庁)モントレー湾国立海洋保護区/スタンフォード大学 ホプキンス海洋研究所
ブリティッシュコロンビア州連邦政府/ブリティッシュコロンビア大学森林センター/海洋漁業研究所/国連機関ユネスコ本部 水資源管理部/国連世界水アセスメント計画ペルージャ研究所/国連食糧農業機関 FAO ほか
【海外研究機関について】オーストラリア海洋科学研究所/グレートバリアリーフ海洋公園局/スミソニアン環境研究所/国連食糧農業機関/国連世界水アセスメント計画
【コラム】スタインベックの故郷カリフォルニア/おわりに/引用・参考文献/索引・用語集