10世紀の十和田火山噴火は、過去2000年間で日本最大級であった。
この噴火がもたらした被害状況、平安時代の東北地方の蝦夷と律令国家の物質文化の変遷・動向を、遺跡・遺構とテフラの分析を介して調査・解明する。
火山灰考古学から災害と人々の動向を知り、将来への備え、未来を考える。
丸山浩治(まるやま こうじ)
1975年岩手県生まれ。
弘前大学大学院地域社会研究科後期博士課程単位取得退学。
博士(学術)。
(公財)岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターを経て、現在、岩手県立博物館専門学芸員。
序 章
1 本研究の背景と目的
2 文献資料にみる古代の東北地方北部
第1章 考古学とテフラ
1 遺跡とテフラ
2 十和田と白頭山の 10 世紀噴火 ― 概要と噴火年代研究 ―
(1)十和田(2)白頭山
3 考古学における To-a テフラと B-Tm テフラの扱われ方
―広域降下テフラをどう扱ってきたか―
(1)年代指標としてのテフラ (2)災害痕跡としてのテフラ―古代を中心に―
4 問題の所在
第2章 研究方法
1 作業と方法
2 本論における方法の詳細と対象地域
(1) 研究の対象(2)分析方法
第3章 基礎的分析結果―各遺構廃絶時期の決定―
1 律令制・郡内
(1)陸奥国(2)出羽国
2 郡外
(1) 太平洋側(2)日本海側
第 4 章 各噴火現象の堆積物確認範囲にみる被害推定
1 前提
2 火砕流の到達範囲と遺跡にみる被害
3 ラハールの到達範囲と遺跡にみる被害
(1)米代川流域(2)浅瀬石川~岩木川流域(3)その他の河川でラハールが発生した可能性
4 降下テフラの堆積と被害推定
(1)被害度の推定方法(2)一次堆積物の層厚(3)二次堆積事象を含めた被害区分
5 小結
第5 章 To-a・B-Tm の堆積様相からみた地域集団の動態
1 前提
2 各期の様相
(1)Ⅰ期(To-a 降下前廃絶(古))(2)Ⅱ期(To-a 降下前廃絶(新))(3)Ⅲ期(To-a 降下直前~降下時廃絶)(4)Ⅳ期(To-a 降下後~ B-Tm 降下前廃絶)(5)Ⅴ期(B-Tm 降下直前~降下時廃絶)(6)Ⅵ期(B-Tm 降下後廃絶)
3 小 結―十和田 10 世紀噴火を画期とした地域社会動態―
第 6 章 9 ~ 10 世紀における竪穴建物の形態変遷と十和田10世紀噴火
1 前提
2 分析する属性と方法
(1)属性(2)方法
3各期の様相
(1)Ⅰ期(2)Ⅱ~Ⅲ 期(3)Ⅳ~Ⅴ 期(4)Ⅵ 期
4 小結―住まいの形態からみた十和田10世紀噴火前後の人的動態―
(1)竪穴建物建築様式にみる「律令的建物」と「在地的建物」(2)両建物様式からみる十和田 10 世紀噴火前後の社会動態
第 7 章 9 ~ 10 世紀における土器の変化と十和田 10 世紀噴火―土師器甕に着目して―
1 前提
(1) 分析対象器種の選定とその理由(2)東北地方北部における平安期の土師器煮炊具編年研究の状況
2 分析する属性と方法
3 各期の様相
(1)Ⅱ期(2)Ⅲ期(3)Ⅳ期(4)Ⅴ期(5)Ⅵ 期
4 小結―煮炊具からみた十和田 10 世紀噴火前後の人的動態―
(1)「律令的土器」と「在地的土器」(2)各地における土師器煮炊具の変化とその時期 (3)火山噴火との関連性
終 章 結 論―十和田 10 世紀噴火に対する社会の反応―
1 火山災害史研究を進展させるために
2 十和田 10 世紀噴火の被害推定と人的動態
3 物質文化にみる地域集団の性格差
4 今後の課題
引用・参考文献
あとがき