都市の成立、都市化の進行による環境の変化は人や動物の健康にどのような影響を与えたか。世界各地の古代・中世・近世における都市と非都市の疾病や障害の実態を古病理学的視点から究明し、新たな歴史像の構築に挑戦する。
藤田 尚(ふじた ひさし)
金沢大学 古代文明・文化資源学研究所客員教授
1965年、青森県生まれ。
2002年に博士(医学)を衛生学にて取得。新潟県立看護大学准教授を経て2023年より現職。
専門は古病理学,古健康科学,古人口学,考古寄生虫学など。
現在,日本古病理学研究会長
主要著書に,『古病理学事典』(同成社 2012年),『Periodontal Diseases in Anthropology』(InTec 2012)などがある。
申 東勳(SHIN Dong Hoon )
ソウル大学校医科大学教授
1966年、韓国 ソウル特別市生まれ。
2000年に医学博士取得後,ソウル大学校の副教授を経て 2010年に教授に就任。
専門は古病理学,生物人類学で,ミイラ,古寄生虫学を含む領域で多くの論文を執筆。
主要著書に,『Handbook of Mummy Studies』(Springer 2021年),『New Perspectives on the Harappan Culture in Light of
Recent Excavations at Rakhigarhi』(Archaeopress 2023年)などがある。
総論
都市民の生活と疾病―東アジア的モデルの模索―(藤田 尚・申 東勳)
第1章 都市化と人類の病気:国際学界の最新傾向
生物人類学と古病理学からみたインダス都市の繁栄と衰退(ヴァサント・シンデー,金 容俊,申 東勳,小茄子川 歩)
人類史における都市化と寄生虫感染症(申 東勳,藤田 尚,洪 宗河)
健康,人口,都市化の生物考古学(トレーシー·ベッシンガー,シャロン·ドウィット)
医学的見地からみた都市化とヒトの疾病(藤田 尚,ピアーズ・ミッチェル,申 東勳)
日本における産業化と都市化が健康に与えた影響―生物考古学の視点―(長岡朋人)
第2章 韓半島・日本列島の都市化と疾病
最新の発掘調査で明らかになった古代韓国の都市の発展と都市民の生活(李 陽洙・申 東勳)
弥生時代の人口変動と暴力(中川朋美)
古代都城における疫神祭祀―長岡京・平安京を中心として―(山田邦和)
中世都市鎌倉における動物の古病理(植月 学)
人骨から見る江戸時代の疾病構造(藤澤珠織)
第3章 人類の疾病への新たなアプローチ
パレオゲノミクスによる古病理学研究の新展開(覺張隆史×藤田 尚)
感染症と文明―コロナ禍で考える医療と社会―(山本太郎)
コラム
弥生時代以降に起きた感染症への遺伝的適応の痕跡:HLA遺伝子に作用した正の自然選択(大橋 順)
先史古代の動物古病理から探る家畜化と都市化―千葉県須和田遺跡第6地点出土の犬骨を中心に―(山崎京美)
江戸時代の桑名城下出土の動物骨の古病理(三谷智広,須藤 梢,藤田 尚)
歯科衛生から見た都市化と口腔疾患(小原由紀)