多賀城創建1300年
本年度〈国宝〉指定記念出版
日本三古碑のひとつ多賀城碑は、『おくのほそ道』に「壺の碑」と記され江戸時代には多くの文人たちが関心を示していたが、明治以降は一貫して偽作と信じられてきた。
しかし1989年刊行の本書によって真碑であるとの結論を得て、1998年には重要文化財に、そして本年ついに国宝の指定を受けることとなった。多賀城の創建・改修問題を解く唯一の文字資料・多賀城碑を総合的に研究した名著が、平川南による新稿『多賀城碑が刻む「激動の東アジア世界」』を加えた【第三版】となってここに復刊。
安倍辰夫(あべ たつお)
1916年生まれ
東北帝国大学法文学部卒業(国文学)
文部事務官(文部省初中局)、静岡県学校教育課長、宮城県教育長、宮城県図書館館長、東北歴史資料館(現・東北歴史博物館)館長、宮城県農業短期大学学長、東北アララギ会「群山」会員。
2003(平成15)年8月逝去。
平川 南(ひらかわ みなみ)
1943年生まれ
山梨大学学芸学部卒業
宮城県多賀城跡調査研究所、国立歴史民俗博物館歴史研究部教授、文学博士(東京大学)、山梨県立博物館館長、国立歴史民俗博物館館長、大学共同利用機関法人人間文化研究機構同機構長、国立歴史民俗博物館名誉教授。
多賀城碑が刻む「激動の東アジア世界」(平川 南)
序章 碑の謎(安倍辰夫)
おくのほそ道と壺の碑/いしぶみの謎
第1章 碑の発見とその名声(平川 南)
碑の発見をめぐって/壺の碑と多賀城碑
付・多賀城碑の拓本(安倍辰夫)
第2章 碑の真偽論争(平川 南)
近世の真偽論/明治・大正の真偽論/昭和の真偽論
第3章 姿・石材・彫り方(岡田茂弘・平川 南・鎌田俊昭)
石碑の現状/碑面の状況/考察
付・石材として見た「多賀城碑」(永広昌之)
第4章 字くばりとものさし(安倍辰夫)
字配りの観察/使われたものさし復元/ものさし年代
第5章 筆跡の検討(黒田正典)
中村不折画伯の偽造説の分析/外形・形態の分析/線質の分析/書の形態と線質/他の筆跡資料との比較/多賀城碑の全体的特徴
第6章 壺碑(つぼのいしぶみ)(安倍辰夫)
古代中世の和歌とつぼのいしぶみ/中世文学とつぼのいしぶみ/多賀城碑の発見と壺碑/南部の坪石文/謎の壺碑
第7章 碑文の検討(平川 南)
里程/蝦夷国と靺鞨国/東人と朝獦の官位/その他の問題点
第8章 発掘調査からみた多賀城の変遷(高野芳宏)
調査成果の概要/多賀城の変遷/遺構期の年代
第9章 多賀城碑地下部分の発掘調査(白鳥良一)
多賀城跡のこれまでの発掘調査成果と多賀城碑/覆屋の解体修理と多賀城碑地下部分の発掘調査/多賀城碑が最初に建てられた年代
終章 碑文の語るもの(平川 南)
付・多賀城碑関係文献目録