近年、考古学による発掘調査や研究が進み、これまで別々に進められてきた、アイヌ考古学と中世・近世考古学を総合して、新たな蝦夷地史の構築が求められている。本特集では、考古学の成果から遺跡や遺物の変遷が示し、擦文期からの継続と変化やより具体的な生業の姿やその変化を追う。
また、改めて現在の発掘調査や教育のあり方についても言及する。
本号の編集協力者 ─ 関根達人(弘前大学教授)
1965 年埼玉県生まれ。東北大学大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。編著書に『中近世の蝦夷地と北方交易』『松前の墓石から見た近世日本』『あおもり歴史モノ語り』『成田彦栄氏考古・アイヌ民族資料図録』などがある。
口絵(カラー)
アイヌ文化の胎動―擦文文化期の儀礼・厚真町上幌内モイ遺跡―/チャシ研究のいま/シカの送り場/アイヌ文化の出土漆器/アイヌ文化のシトキと出土品/アイヌの刀・刀装具/本州アイヌの考古資料/カラフトアイヌの考古資料
北方史とアイヌ考古学 関根達人
アイヌの遺跡と生業
アイヌの集落論 瀬川拓郎
チャシ研究のいま 田才雅彦
アイヌの墓制―中・近世遺跡の考古学的調査― 青野友哉
アイヌの焼畑農耕 横山英介
アイヌの送り場 高橋 理
アイヌの物質文化
アイヌ文化の漆器 北野信彦
アイヌ文化の木製品 清水 香
アイヌの武器・武具 関根達人・佐藤里穂
アイヌの鉄製品 笹田朋孝
アイヌ文化の骨角製品 高橋 健
アイヌ文化におけるシトキの成立 越田賢一郎
アイヌ考古学と近現代
アイヌ考古学と民族誌 手塚 薫
アイヌ考古学とパブリック考古学 加藤博文
アイヌ考古学と歴史教育 中村和之
〈コラム〉
オホーツク文化とアイヌ文化 熊木俊朗
擦文からアイヌへ―厚真町の事例から― 乾 哲也
形態人類学からみたアイヌ 奈良貴史
アイヌ文化における食生態の多様性―勝山館跡・お浪沢遺跡出土人骨の同位体分析― 米田 穣・奈良貴史
最近の発掘から
古墳時代前期北縁の拠点的な集落宮城県―栗原市入の沢遺跡― 村上裕次
状態の良好な武具など大量の副葬品―宮崎県えびの市島内139号地下式横穴墓― 橋本達也・中野和浩
連載 ソウル百済王宮址発見と保存30年史 李亨求 訳/木村光一・岡 泉水
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