現代歌舞伎俳優のプロトタイプ、高麗屋三兄弟――
高麗屋三兄弟とは、七世松本幸四郎の三人の息子たち、即ち十一世市川團十郎、八世松本幸四郎、二世尾上松綠の三兄弟のことであり、彼らこそが歌舞伎役者たちの新しい生き方として、映画やテレビドラマ、CMといった領域を切り開いていった功労者なのだ、ということを本書では検証していく。(「はじめに」より)
十代目 松本幸四郎丈ご推薦!
「祖父、そして二人の大叔父が芸能史に歴史を刻んだ証がここに閉じられています。歌舞伎に、そして映画に、そして僕にとっての誇りである高麗屋三兄弟。知ってください。」
谷川 建司(たにかわ たけし Takeshi Tanikawa)
1962 年東京都生まれ。映画ジャーナリスト、早稲田大学政治経済学術院客員教授。
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。1985~ 1992年日本ヘラルド映画に勤務し、1993年にフリーの映画ジャーナリストとして独立。2005年より早稲田大学政治経済学術院助教授、2008年教授、2010年より現職となる。研究分野は映像文化論、映像ジャーナリズム論。1997年、論文「メディアとしての映画」で第一回京都映画文化賞を受賞。著書に『「イージー・ライダー」伝説』(1996年・筑摩書房)『アメリカ映画と占領政策』(2002年・京都大学学術出版会)『アメリカの友人 東京デニス・ホッパー日記』(2011 年・キネマ旬報社)『戦後「忠臣蔵」映画の全貌』(2013年・集英社クリエイティブ)、編著に『占領
期のキーワード100』(2011年・青弓社)、共編著に『占領期雑誌資料大系(大衆文化編・全五巻)』(2008~ 2009年・岩波書店)などがある。
第1部 高麗屋三兄弟論―現代歌舞伎役者のプロトタイプとしての團十郎、幸四郎、そして松綠
はじめに
第1章 七世松本幸四郎
1-1 九世市川團十郎の許での修業、歌舞伎座で日本初のオペラ『露営の夢』への主演
1-2 帝劇専属俳優としての活躍――『オセロオ』、『ジュリヤス・シーザー』への挑戦
1-3 『勧進帳』の弁慶、『仮名手本忠臣蔵』の由良之助、そして『天一坊』の大岡越前守
1-4 三人の息子に託した歌舞伎界の将来
第2章 十一世市川團十郎
2-1 九世市川高麗藏時代の東宝劇団への電撃移籍の顛末
2-2 松竹への復帰、そして市川宗家の養子として九世市川海老藏襲名
2-3 『源氏物語』での爆発的な「海老さまブーム」、『若き日の信長』以降の大佛次郎とのコラボレーション
2-4 映画『江戸の夕映』、『繪島生島』での主演
2-5 十一世市川團十郎襲名の一億円興行
2-6 相次ぐトラブルと日本俳優協会脱退、そして無念の死
第3章 八世松本幸四郎
3-1 初世中村吉右衛門の許での修業時代
3-2 松竹の看板〝映画スター〟としての活躍――『花の生涯』から『天下御免』まで
3-3 文学座での『明智光秀』への主演、『嬢景清八嶋日記』での文楽との史上初めての共演、そして『オセロー』への挑戦
3-4 歌舞伎界に激震を走らせた東宝への移籍
3-5 東宝での苦労と移籍の収支
3-6 東宝での看板〝映画スター〟としての活躍――黒澤明監督作品、『忠臣蔵』、そして昭和天皇役への挑戦
3-7 テレビドラマ『鬼平犯科帳』での新たな活躍と二人の息子たちへのバトンタッチ
第4章 二世尾上松綠
4-1 六世尾上菊五郎の許での修業時代
4-2 菊五郎劇団を率いての活躍、映画『群盗南蛮船 ぎやまんの宿』、長兄海老蔵との映画での共演、『バナナ』での新境地
4-3 初期のテレビ番組とNHK大河ドラマ第一作『花の生涯』等での活躍
4-4 『シラノ・ド・ベルジュラック』、『悪魔と神』、『オセロー』等での成功
4-5 四世藤間勘右衛門として、二人の兄のスーパーサブとしての立ち位置
4-6 悲劇の晩年
第5章 義弟四世中村雀右衛門、そして高麗屋三兄弟の息子たち
5-1 七世松本幸四郎の娘婿としての四世中村雀右衛門
5-2 十二世市川團十郎――大名跡襲名、テレビドラマでの活躍、そして白血病との戦い
5-3 二世松本白鸚――ミュージカル、シェイクスピア、そしてNHK大河ドラマでの活躍
5-4 二世中村吉右衛門――落ちこぼれの〝さぶ〟から〝鬼の平蔵〟へ、そして人間国宝への軌跡
5-5 初世尾上辰之助――三之助ブームから独自の境地への到達、そして惜しまれる早世
終 章
6-1 三兄弟唯一の共演作としてのテレビドラマ『本陣蕎麦』
6-2 七世幸四郎十七回忌追善特別公演での三兄弟
6-3 高麗屋三兄弟の果たした役割は何だったのか
6-4 継承者たち――高麗屋三兄弟の孫たち
第2部 高麗屋三兄弟出演全映画・テレビドラマ主要作品総覧
《Ⅰ》映画作品
《Ⅱ》主要なテレビドラマ作品一覧
《Ⅲ》その他のテレビドラマ
あとがき