五感で感じる日本人だからこそ。
建材、食、道具、神仏…日本の暮らしにある樹木の香り。
豊富な森林を持つ日本の文化を香りから探っていきます。
樹木から日本の香りを感じてみませんか。
【著者紹介】
有岡利幸(ありおか としゆき)
<著者略歴>
1937年、岡山県に生まれる。1956年から1993年まで大阪営林局で国有林における森林の育成・経営計画業務などに従事。1973年から2003年3月まで近畿大学総務部総務課勤務、2003年から2009年まで、財団法人水利科学研究所客員研究員。1993年第38回林業技術賞受賞。
<主要著書>
『森と人間の生活―箕面山野の歴史』(清文社、1992)、『ケヤキ林の育成法』(大阪営林局森林施業研究会、1992)、『松と日本人』(人文書院、1993、第47回毎日出版文化賞受賞)、『松―日本の心と風景』(人文書院、1994)、『広葉樹林施業』(分担執筆、(財)全国林業改良普及協会、1994)、『松茸』(1997)、『梅Ⅰ・Ⅱ』(1999)、『梅干』(2001)、『里山Ⅰ・Ⅱ』(2004)、『桜Ⅰ・Ⅱ』(2007)、『秋の七草』『春の七草』(2008)、『杉Ⅰ・Ⅱ』(2010)、『檜』(2011)、『桃』(2012)、『柳』(2013)、『椿』(2014)、『欅』(2016)(以上、法政大学出版局刊)、『資料 日本植物文化誌』(八坂書房、2005)。
『つばき油の文化史―暮しに溶け込む椿の姿―』(2014)、『栗の文化史―日本人と栗の寄り添う姿―』(2017)(以上、雄山閣刊)。
まえがき
第1章 木材の香気を生かす建築と酒造り
1 桧の香りと日本建築
和風建築に最も好まれた桧材/桧の香りと木造住宅/桧の産地と材のつかいみち/宮殿の建築材はほとんど桧/伊勢神宮式年遷宮の桧/徳川幕府の桧材節約令/江戸期の諸藩の桧/明治大正期の日本建築と桧/桧製の風呂桶/つよい芳香の楠の木材利用/良い香りのする桂の木材と葉
2 酒造りと香りある樹木
杉で作る酒造用具のはじまり/清酒の香りは杉木の香り/灘地方の清酒醸造用桶樽/杉材と清酒の関わり/酒樽の材料の吉野の樽丸/大桶を作る材料の酒榑/酒樽作り/清酒の船輸送と樽/下り酒と酒樽/ウイスキー類の作り方/ウイスキー類の樽貯蔵から熟成へ/蒸留酒の貯蔵・熟成とオーク/日本のオーク材、水楢の蒸留酒用樽
第2章 香る木の葉でつつむ寿司と餅菓子
1 香りの良い葉っぱでつつんだ寿司
いろいろな寿司/柿の葉寿司/吉野川流域の柿の葉寿司/紀の川流域の柿の葉寿司/鳥取県智頭地方の柿の葉寿司/石川県の柿の葉寿司と椿鮨/福井県のすし飯をつつむ油桐葉/食物をつつむ朴の木の葉っぱ/木曽地方の朴葉飯と朴葉寿司/岐阜県の朴葉寿司が作られる地域/東濃地方の朴葉寿司/飛騨地方の朴葉寿司/朴葉寿司の商品化と味の変化
2 香りの良い葉でつつむ餅菓子
木の葉でつつむ餅のはじまり/『源氏物語』の椿餅/木曽谷の朴葉巻き/岐阜県の朴葉餅と端午の節句/江戸期の柏餅の作り方/柏餅は端午節句の贈物/柏餅をつつむ葉っぱと餅の名称/桜餅つつむ塩漬け桜葉/桜葉の生産地と塩漬け桜葉
第3章 樹木の香り利用と食事
1 香る木で作る調理用具と食具
まな板は魚の料理台から/日本食はまな板と包丁から/まな板の大きさと部位の名称/まな板と鯉と包丁式/『木材の工芸的利用』のまな板材種/まな板用の木の種類とその特徴/すりこ木とすり鉢/山椒のすりこ木(擂粉木)/蒸し料理の道具の蒸篭/曲物で作る蒸篭/食物の移動につかう箸/吉野杉製材の背板から割箸/割箸の種類と作り方/割箸のはじまりと割箸生産の現況/楊枝につかわれる黒文字の仲間/黒文字の楊枝
2 香りのある木の葉を食べる
山椒にも品種がある/山椒の香り成分と青山椒佃煮/山椒の葉っぱの利用/各地の山椒の味わい方/日本特産の香辛料、粉山椒/山椒の樹皮の佃煮と実の保存/山椒を薬用とする/臭木の佃煮/ウコギ科の樹木の利用
第4章 神仏に供える香りの樹木
1 仏に供える香木の樒
樒は日本独特の仏教香木/樒の実の形と青蓮華/樒はなぜ仏前に供えられるか/仏前に樒の香り供える理由/京都の愛宕神社の神事と樒/箱根の門松と樒/奥三河の樒の門松/平安期に折枝とされた樒/仏花とされる平安期の樒/樒の毒/仏に供えられる高野槙
2 仏事にある香りを織りなすもの
杉葉から線香を作る/三重県尾鷲の杉葉粉作り/各地の杉葉線香/樒で作られる抹香
3 神に供える無香の榊
わが国の神は香りを好まない/「サカキ」のいろいろな語源説/神事でなぜ榊をつかうか/伊勢神宮の飾り榊/神にお供えする玉串と大麻/万葉から平安期の榊/京都・大津の祭礼と榊/静岡・神奈川・東京の祭礼と榊/榊とともに神に供えられる非榊/寒い地域で神に供えられる冬青
あとがき
参考文献