日本刀の真粋は斬れ味の凄さ、素晴らしさにある。
それを江戸時代、世襲的に八代にわたり実証、決定してきたのが、“首斬り浅右衛門”こと山田家である。その実証資料として残る同家の『刀剣押形』二十九冊から資料的に価値の高いもの、興味深いものを抄録し解説を加えた本書は、刀剣研究史上初めて発表された資料として、初版刊行時に大反響を呼んだ。
今回五十年振りに刊行されたこの〈復刻版〉によって読者は日本刀の新しい興味を再発見するであろう。
①本上巻には、山田家『刀剣押形』二九冊のうちから、第一七冊までの、刀剣押形約一三〇刀を選び掲載した。
②本書の上巻・下巻を含む原本押形集には、試し依頼にきた年月日、依頼者名、刀の長さ・作風などのほか、斬り試しの成績が注記してある。それを本書では活字になおして読みやすくした。
③刀の添え銘、刀身の文字などのほか、注記にみる人名・地名などに解説をつけた。
④「解説編」では、山田家『刀剣押形』についてや、試し斬りの歴史やエピソード、さらに試し斬りの実際を、山田家の秘伝書その他によって明らかにしている。
⑤カラー口絵では、試し斬り図を掲げたほか、本文にも山田家や刑場に関する写真・古文書などを約一〇〇図挿入して、興味深く読めるようにした。
福永酔剣(フクナガスイケン)
医学博士。元陸軍軍医中尉、元熊本大学助教授。
「日本刀物語(正・続)」「刀鍛冶の生活」「日本刀おもしろ話」「皇室・将軍家・大名家刀剣目録」「日本刀大百科事典」(いずれも雄山閣)など日本刀に関する著作多数。
【解説編】
浅右衛門押形について
試し斬りの歴史
(試し斬りの初見/源三位頼政の鑑定眼/石切りの伝説/斬れない正宗の刀/兜割りの業物/伊達政宗の黒ん坊斬り/徳川家康臨終の試し斬り/殺生関白の千人斬り)
試し斬りの職業化
(試し斬りの元祖/小池流の試し斬り/中川左平太/山野加右衛門・勘十郎/鵜飼十郎右衛門/山野門下の達人)
試し斬り解説
(斬れ味を決めるもの/生き胴試し/罪人の首斬り/首斬りの実際/試し斬りの準備/試し斬りの要領/裁断箇所の名称/試し斬りの種類/斬れ味に関する異名)
【押形編】
第1冊(文政8年)~第17冊(嘉永元年)