遺跡から出土する陶磁器は、歴史資料「考古学陶磁器」として、遺跡との関係で地域・時代・階層の情報をその身にまとう。
本書はそれら資料に基づいた多様な研究法と新鮮な論点から語られる 生活文化史のシリーズ第14巻である。
佐々木達夫(ささき たつお)
1945年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科考古学専門課程博士課程単位取得退学。金沢大学教授、同学評議員・埋蔵文化財調査センター長を経て、現在、金沢大学名誉教授、古代学協会理事、日本考古学会評議員、石川県埋蔵文化財センター評議員。文学博士。
[主要著書]
『元明時代窯業史研究』(吉川弘文館 1985)、『畑ノ原窯跡』(波佐見町教育委員会 1988)、『日本史小百科・陶磁』(東京堂出版 1994)、『陶磁器、海をゆく』(増進会出版社 1999)、『ペルシア湾と紅海の都市遺跡比較から見る古代海上貿易史研究』(金沢大学2004)、『九谷A遺跡範囲確認調査報告書』(加賀市教育委員会 2005)、『タニ窯跡の研究―カンボジアにおける古窯の調査―』(連
合出版 2007)、『地域社会の文化遺産から探るイスラーム陶器の文化的変遷』(金沢大学 2008)、『シャルジャ、砂漠と海の文明交流』(シャルジャ展日本開催委員会 2010)、『中国陶磁 元青花の研究』(編著 高志書院 2015)、『中近世陶磁器の考古学 第一巻~第十三巻』(編著 雄山閣 2015 ~ 2021)ほか多数。
まえがき(佐々木達夫)
旧家伝来資料から見た近世奄美群島における陶磁器流通(渡辺芳郎)
はじめに/1. 奄美群島の旧家伝来陶磁器/2. 伝来陶磁器の特徴と性格/おわりに
長崎開港から出島築造までの陶磁器―1570年代から1640年代を中心に―(扇浦正義)
はじめに/1. 近世長崎の発展/2. 国際貿易港としての長崎/3.『長崎夜話草』にみる中国貿易と磁器/4. 出土陶磁/5. 茶道具/おわりに
象嵌文と褐釉印花文―17世紀第2~第3四半期頃の武雄南部諸窯で見られる特色ある技法について―(東中川忠美)
はじめに/1. 象嵌文と褐釉印花文/2. 生産した窯跡について/3. 特色ある文様の種類/4. 文様から見た技法の受容・発展/まとめ
『酒井田家文書』にみる御用注文について―貞享年間から正徳年間を中心に―(酒井田千明)
はじめに/1. 『酒井田家文書』のうち『御用注文帳』(1684~1715)にみる注文について/2. 御用注文帳』に見る大名家注文品について/おわりに
近世後期地方窯の陶磁器生産ラインナップ―天草高浜窯の18世紀後半~19世紀前半の事例から―(中山 圭)
はじめに/1. 高浜焼に関する研究/2. 文献史料から確認される生産ラインナップ/3. 表採陶磁器からみる生産の状況/おわりに
近世琉球の赤絵生産について(倉成多郎)
はじめに/1. 先行研究及び赤絵の出現年代/2. 赤絵枝梅文を踏襲する作例について/3. 近世末から近代にかけての諸例/おわりに
硫酸瓶 ―近代化学工業を支えた耐酸陶器―(小田木富慈美)
はじめに/1. 明治後半~昭和の硫酸瓶(小野田と常滑)/2. 明治前半の硫酸瓶(大阪での発見)/3. 明治初期の硫酸瓶(硫酸瓶の誕生と大阪の近代工業)/4. 硫酸瓶の分類と編年(大阪の出土遺物から)/5.硫酸瓶の起源(19世紀以前の欧米)/まとめ
平泉町倉町遺跡の輸入陶器壺類について(山本信夫・八重樫忠郎)
はじめに/1. 出土した輸入陶磁器/2. 陶器壺破片の特徴/3. 各壺の復元/4. 出土陶磁器の年代観と意味/おわりに
補遺:安平壺をめぐる謎(坂井 隆)
はじめに/1. 原城跡とマニラ:カトリックの流れ/2. 台湾キウラン遺跡と琉球/3. 新発見の生産地と東南アジア大陸部/おわりに― 安平壺の貿易
世界を席巻した中国・日本磁器(松浦 章)
はじめに/1. 中国磁器の隆盛/2. 日本磁器の展開/3. 世界市場に進出した中国磁器・日本磁器/おわりに
スウェーデン・イェーテボリ号出土陶瓷器の研究(髙島裕之)
はじめに/1. スウェーデン東インド会社/2. イェーテボリ号出土陶瓷器をめぐって/おわりに
東南アジア大陸部におけるタイ語族の陶器生産―現在から過去へ―(L. A. コート・H. L. レファーツ 著/向井 亙 訳)
はじめに/1. 現在の陶器生産/2. 25~50年前の陶器生産/3. 19 世紀半ばの陶器生産/4. 17 世紀半ばの陶器生産/5. タイ語族の陶器生産とクメール陶器生産の関係/おわりに―陶器とタイ語族
歴代青花材法(陳 殿)
はじめに/青花材法のプロセス全体の流れ/まとめ
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