漆の分析から縄文社会の実像に迫る。
考古学・植物学・応用有機化学などの多角的な視点から縄文時代の「資源」としての漆利用技術を分析し、歴史的背景を解き明かす。
阿部芳郎(あべよしろう)
1959年生
明治大学 文学研究科 史学 博士課程単位取得後退学
博士(史学)
現在、明治大学文学部教授 明治大学資源利用史研究クラスター代表
〈主要著作論文〉
「縄文時代の生業と中里貝塚の形成」『中里貝塚』2000年、「大森貝塚の調査と大森ムラの実像」『東京の貝塚を考える』雄山閣、2008年、「加曽利貝塚の形成過程と集落構造」『東京湾巨大貝塚の時代と社会』雄山閣、2009年、「「藻塩焼く」の考古学」『考古学研究』63―1、2016年、「余山貝塚の生業活動―骨角貝器の大量生産遺跡の出現背景―」『霞ヶ浦の貝塚と社会』雄山閣、2018年、「後・晩期における長期継続型地域社会の構造―生業と祭祀と社会構造との関係性から―」『縄文文化の繫栄と衰退』雄山閣、2019年
縄文の漆と社会 目次
はじめに(阿部芳郎)
序章 「縄文の漆工芸」と社会(宮腰哲雄)
第Ⅰ章 ウルシの性質と有機化学分析の実際
第1節 ウルシという植物の特性(能城修一)
第2節 漆の科学分析の歴史とその概略(宮腰哲雄)
第Ⅱ章 縄文漆の理化学的分析
第1節 縄文のウルシ利用と科学分析(宮腰哲雄)
第2節 漆膜の構造からみえる縄文の漆工技術(本多貴之)
第3節 漆の産地と年代の探求(吉田邦夫)
第4節 漆に関わる材料の分析(本多貴之)
第Ⅲ章 漆器の製作技術の解明
第1節 木胎製作と磨製石斧(栗島義明)
第2節 櫛の製作(片岡太郎)
第3節 接着剤としての漆―東村山市下宅部遺跡出土資料の事例―(千葉敏朗)
第Ⅳ章 漆と縄文社会
第1節 ウルシ利用の人類史(能城修一・佐々木由香)
コラム① 鳥浜貝塚の漆工芸(鯵本眞由美)
第2節 前期の集落形成と漆工芸の展開(蒲生侑佳)
コラム② 押出遺跡と漆工芸(渋谷孝雄)
第3節 中期集落と漆工芸の関係―デーノタメ遺跡を中心とした漆利用―(磯野治司・齊藤成元)
コラム③ 前田遺跡の漆工芸(三浦武司)
第4節 漆文化の地域性―前期を中心に―(蒲生侑佳)
コラム④ 大木戸遺跡の漆工芸技術(金子直行)
第5節 縄文時代後晩期の漆器と容器間関係(阿部芳郎)
コラム⑤ 是川遺跡の漆器と遺跡形成(小久保拓也)
第6節 漆製品の埋葬と社会―カリンバ遺跡―(木村英明・上屋眞一)
あとがき(阿部芳郎)
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