隋煬帝が建設した洛陽城は何故宋代まで長期間の使用に耐えうる都城になりえたのか
自然水系と経済的基盤として建設された運河をも内包した総合的な都市水利という視点から、隋唐洛陽城の立地と構造を検証し、煬帝が目指した都城理念と唐高宗・武則天に受け継がれた都城運営を考察することにより、水利史・都城史研究における洛陽城の歴史的意義を明らかにする。
宇都宮美生 (うつのみや みき)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)取得。東洋文庫若手研究員、法政大学・国士舘大学・静岡県立大学非常勤講師を経て現在、法政大学文学部准教授。専門は中国古代史(都城史、水利史、交流史、交通史)。
主要著書
『千年帝都洛陽―洛陽の遺跡と観光』(龍門石窟研究院編、共著)河南人民出版社、2007年
『東洋文化研究所蔵山本照像館等撮影中国史跡写真目録』(平㔟隆郎編、共著)東京大学東洋文化研究所附属東洋学研究情報センター、2017年
『水経注疏訳注(穀水篇)』(東洋文庫中国古代地域史研究グループ編、共著)東洋文庫、2019年
『中国前近代の関津と交通路』(辻正博編、共著)京都大学学術出版会、2022年
隋唐洛陽の都城と水環境 目次
序章 隋唐洛陽城の都城史研究の動向と諸問題
第1節 都城研究と隋唐洛陽城
第2節 洛陽地域の都城の変遷と水
第3節 中国都市水利史研究の動向と本研究の意義
◎ 第1部 隋唐洛陽城をとりまく水環境◎
第1章 隋唐洛陽城における河川、運河と水環境―問題の所在―
はじめに
第1節 穀水
第2節 漕渠
第3節 橋や池等の付属施設
おわりに
第2章 隋唐洛陽城の洛水と都城水利―「洛水貫都」構想を中心に―
はじめに
第1節 天文思想の導入と南方文化への憧憬
第2節 経済面と防衛面の理由と役割
第3節 防災の対策と水利体系の統制
おわりに
第3章 隋唐洛陽城の穀水―煬帝の洛陽奠都をめぐって―
はじめに
第1節 隋唐以前の穀水
第2節 隋唐時代の穀水
第3節 都城の移動と穀水
おわりに
第4章 隋唐洛陽城における煬帝の運河建設―通済渠と通遠渠をめぐって―
はじめに
第1節 通済渠と通遠渠
第2節 洛陽城内の運河の構造と性格
第3節 洛陽城外の運河の流路と役割
第4節 運河の全体像
第5節 洛陽城と漕渠
おわりに
◎ 第2部 隋唐洛陽城の施設と水利◎
第1章 隋唐洛陽城の西苑の四至と水系
はじめに
第1節 東面
第2節 南面
第3節 西面
第4節 北面
第5節 その他の建造物
おわりに
第2章 隋唐洛陽城の西苑の役割と水利
はじめに
第1節 隋煬帝の西苑
第2節 西苑の位置と設置目的
第3節 西苑の利用の変化
おわりに
第3章 隋唐洛陽城の含嘉倉―設置と役割に関する一考察―
はじめに
第1節 含嘉倉の設置
第2節 東巡と含嘉倉
第3節 転般倉としての含嘉倉
おわりに
第4章 隋唐洛陽城の穀倉―子羅倉、洛口倉、回洛倉および含嘉倉をめぐって―
はじめに
第1節 四倉の使用期間
第2節 四倉の構造と支出用途
第3節 穀倉の運営と倉庫令
おわりに
終章:洛陽城における水環境の変遷と意義
付章:隋唐の水利関係の諸機関について―『唐六典』を中心に―
初出一覧/参考文献/図版出典
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