日本刀の持つ特性は何に起因するのか。
鍛造技術は原料にどんな変化をもたらすのか。
時代ごとにどんな変遷をたどるのか。
アジア刀、西洋刀とどう違うのか―
鎌倉刀から現代刀まで、材料科学的側面からその微細構造を分析し、日本刀の真の姿と伝統技術の真髄を浮き彫りにする。
北田正弘(きただ まさひろ)
1942 年 東京に生まれる
1966 年 東北大学大学院工学研究科・金属材料工学専攻修士課程修了
1966 年 (株)日立製作所入社・中央研究所に勤務
1997 年 東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻・教授、美術工芸材料学研究室
2009 年 東京藝術大学名誉教授
現 在 東京理科大学客員教授、(独)奈良文化財研究所客員研究員、(一財)総合科学研究機構特任研究員、日本学術会議連携会員
工学博士(1973 年: 超電導材料の研究)
≪主要著書≫
単著: 『初級金属学』(アグネ、新訂版: 内田老鶴圃)、『江戸小紋の紋様と幾何学的解析』『室町期日本刀の微細構造』『Beauty of Arts-from Material Science-』(以上内田老鶴圃)、『機能材料辞典』(共立出版)、『かたちの博物学』(アグネ承風社)、『アモルファス』
(日経サイエンス社)、『江戸の知恵・江戸の技』(日刊工業新聞社)
共著:『未来をひらく超電導』『超電導を知る辞典』『金属間化合物を知る辞典』(以上アグネ承風社)
編著:『鉄の事典』(「第1 章鉄の科学文化史」)『マテリアルの事典』(以上朝倉書店)、『金属学のルーツ』『オプトエレクトロニクスを知る辞典』(以上アグネ承風社)、『デバイス材料工学』『薄膜材料工学』『超電導材料工学』(以上海文堂)、『センサを知る辞典』『機
能材料入門上・下』(以上アグネ)
訳書:『 入門結晶中の原子の拡散』(共立出版)、『シリコンの物語』(内田老鶴圃)
まえがき
第1 章 日本刀の文化
1.1 日本刀の由来/1.2 刀と信仰/1.3 日本刀と美術文化財/1.4 武士と武士道/1.5 刀鍛冶の姿/1.6 鉄の生産1.7 刀の製作と取引/1.8 刀の拵え/1.9 刀の銘・鑢目・彫り物/1.10 従来の主な研究/
第2 章 鉄鋼材料の基礎知識
2.1 古代の鉄/2.2 鉄の結晶構造/2.3 炭素鋼/2.4 鉄- 炭素系状態図/2.5 相分離反応/2.6 組織の観察と成分分析法/2.7 炭素濃度と金属組織/2.8 焼入れとマルテンサイト/2.9 結晶欠陥・転位と加工硬化・集合組織/2.10 焼き戻しと焼鈍/2.11 強度の表し方
第3 章 隕 鉄
3.1 石鉄隕石/3.2 ヘキサヘドライト隕鉄の組織/3.3 オクタヘドライト隕鉄の組織
第4 章 鉄の精錬
4.1 鉱石と還元剤/4.2 たたら(踏鞴)製鉄/4.3 現代製鉄
第5 章 日本刀の微細構造
5.1 鎌倉時代・包永刀/5.1.1 鋼の組織と不純物/5.1.2 非金属介在物/5.1.3 硬度/
5.2 南北朝/5.2.1 備州長船政光刀/5.2.2 来國次刀/5.2.3 法城寺國光刀
5.3 室町時代刀/5.3.1 備州長船住勝光刀/5.3.2 備州長船勝光刀/5.3.3 次廣作の刀/5.3.4 濃州住兼元刀/5.3.5 吉光刀/5.3.6 祐定刀/5.3.7 信國吉包刀
5.4 江戸時代の刀/5.4.1 清光刀/5.4.2 江戸中期刀/5.4.3 備前長船住横山祐包刀/5.4.4 越前福居住吉道刀/5.4.5 国光作刀/5.4.6 関善定兼良刀/5.4.7 忠吉刀
5.5 室町から江戸時代までの種々の刀/5.5.1 四方詰の刀/5.5.2 甲伏せ構造の刀/5.5.3 付け刃の刀/5.5.4 炭素濃度の高い刀/5.5.5 片刃の刀/5.5.6 両刃造りの刀
5.6 現代刀/5.6.1 試作刀(1)/5.6.2 試作刀(2)/5.6.3 試作刀(3)
5.7 近代鋼の満鉄刀および軍刀/5.7.1 近代鋼製の丸鍛え刀/5.7.2 満鉄刀/5.7.3 軍刀
5.8 断面組織の長さ方向の場所依存性/5.8.1 備州長船住勝光刀/5.8.2 室町-江戸時代の無銘刀/5.8.3 江戸中期刀/5.8.4 越前福居住吉道刀
5.9 刀の金属組織と諸性質の変化/5.9.1 焼鈍/5.9.2 鍛錬度と組織/5.9.3 刃鉄と心鉄の組み合わせ鍛錬/5.9.4 硬度の炭素濃度依存性と硬度比/5.9.5 衝撃破壊面の組織/5.9.6 組織の大きさ/5.9.7 非金属介在物の立体的分布/5.9.8 非金属介在物の融解/5.9.9 錆の中の非金属介在物
5.10 刀の不純物とチタンの化合物/5.10.1 刀の不純物元素/5.10.2 非金属介在物中の特有元素/5.10.3 非金属介在物中のチタン化合物
第6 章 槍の微細組織
6.1 極低炭素鋼製の槍/6.2 低炭素鋼製の槍/6.3 中炭素鋼製の槍/6.4 中炭素鋼製菱形断面の槍/6.5 2 相構造の槍
第7 章 研磨砥石および刃紋の組織
7.1 研ぎの過程/7.2 砥石の微細構造/7.3 研磨痕と刃紋の組織/7.4 刀の表面反射率/7.5 反射率に及ぼす非金属介在物の影響/7.6 研磨による表面硬度の増大/
第8 章 古代刀の金属組織
8.1 ケルト刀/ 8.2 漢代の刀/8.2.1 環頭の刀/ 8.2.2 玉鍔刀/8.3 古代鋳鉄刀/8.4 古代朝鮮刀/8.5 青銅で被覆した鉄刀/8.6 日本の古墳時代刀
第9 章 中・近世の西洋刀とアジア刀
9.1 ドイツ8-9 世紀の大型刀/9.2 西洋小型刀/9.3 近世西洋刀(サーベル)/9.4 クリース剣
第10 章 火縄銃に使われた鋼
10.1 金属組織/10.2 透過電子顕微鏡組織/10.3 非金属介在物/10.4 機械的性質
第11 章 鎧・兜・帷子・鍔の鋼
11.1 鎧の鋼/11.2 兜の鋼/11.3 鎖帷子の鋼/11.4 西洋鎧と鎖帷子/11.5 日本刀の鍔の鋼
第12 章 刀の腐食と錆
12.1 表面の緻密な酸化層/12.2 水分が存在する場合の錆/12.3 塩素および硫黄が含まれる場合の錆/12.4 刀の錆の例/12.5 錆の発生形態/12.6 非金属介在物の影響/12.7 非金属介在物による内部への腐食の進行/12.8 錆の防止と保存法
謝辞
索引
Appendex(付録)
(1)Abstract in English(英文概要)
(2)Captions of Figures and Tables(図・表英文キャプション)