家康入部以前の江戸を探る
河川が集中する東京低地で営まれた地域の重層的な歴史を、環境変化と人間活動の両面から解き明かす。
谷口 榮(たにぐち さかえ)
1961 年東京都葛飾区生まれ
国士舘大学文学部史学地理学科卒業
博士(駒澤大学 歴史学)
現在、葛飾区産業観光部観光課 主査学芸員
立正大学・明治大学・國學院大學・和洋女子大学 兼任講師
NHK教育テレビ「高校講座 日本史」講師を歴任
日本考古学協会会員 日本歴史学協会会員(文化財保護特別委員)
東京考古談話会会員 東京中世史研究会会員 境界協会顧問ほか
〈主要編著・著書〉
『江戸東京の下町と考古学―地域考古学のすすめ―』『歴史考古学を知る事典』『遺跡が語る東京の歴史』『東京下町に眠る戦国の城 葛西城』『吾妻鏡事典』『人物伝承事典』ほか多数
序章 東京低地と人間活動の諸相
第一章 東京低地の形成と環境変遷
一 東京低地の形成
1 関東平野最南端の東京低地
2 下町と東京低地
3 縄文海進と失われた台地
4 縄文海退と東京低地の形成
5 人間活動の空白期と平安海進
6 中世以降
二 東京低地の景観と環境的特徴
1 孝標の女や宗長の見た風景
2 「打闢きたる曠地」
3 「天然」を求めて
4 蘆荻と松
5 近代化と変貌する景観
第二章 東京低地への考古学的関心
一 近世の文献に記された地中の歴史
1 洪水と古銭・板碑
2 史料に記された地域の歴史
二 『武蔵野』と関東大震災
1 「此近傍ハ近代迄海底タリシヤ明カナリ」
2 低地への眼差し
3 関東大震災と武蔵野の面影
三 戦後の研究
1 昭和二〇年代から三〇年代
2 可児弘明氏の調査研究
3 昭和四〇年代以降
第三章 低地の開発と古墳の造営
一 東京低地への進出
1 海退直後の様相
2 集落の形成
3 外来系土器と地域間交流
二 集落の展開と水辺の生活
1 古墳時代中期以降の諸相
2 生業活動
三 東京低地の古墳の様相
1 武蔵野台地東縁の古墳
2 下総台地西縁の古墳
3 東京低地北部の古墳
4 東京低地西部の古墳
5 東京低地東部の古墳
四 柴又八幡神社古墳をめぐる諸相
1 柴又八幡神社古墳の石材石室
2 下総型埴輪を樹立する古墳の類型と柴又八幡神社古墳
3 柴又八幡神社古墳の特質と被葬者像
五 大嶋郷戸籍前夜の動向
1 下総台地南西部と東京低地東部
2 渡来系の遺物
3 石室石材と「高橋氏文」
4 部民の設置
5 東京低地東部の開発
第四章 大嶋郷戸籍と集落
一 大嶋郷戸籍の研究
1 大嶋郷戸籍の研究の始まりとその故地
2 大嶋郷戸籍と古代史研究
3 大嶋郷戸籍と考古学
二 大嶋郷推定地内の遺跡
1 遺跡の分布
2 従来の説
3 甲和・仲村・嶋俣の三里を求めて
4 大嶋郷の範囲
三 発掘された大嶋郷
1 ムラの景観
2 生業活動の変化
3 大嶋郷内の牛馬
4 土器は語る
5 特異な遺物
四 大嶋郷内の儀礼
1 供えられた牛馬
2 井戸埋めの事例
3 井戸埋めの祭祀
五 大嶋郷と古代東海道
1 大嶋郷を横断する東海道
2 もう一つの大嶋郷を横断するルート
3 承和二年太政官符と大嶋郷
六 古代葛飾郡の地形と空間領域
1 郡域と地形的な特徴
2 野と原
3 万葉集や風土記的な世界
4 渡河施設と古代の景観
5 下総国の玄関口としての大嶋郷
図版出典一覧