弥生時代後期から古墳時代終末期における、コシの地域社会の実態を解明する。また、水月湖の年縞から復元された気候変動とあわせて集落や古墳の動態を論じるなど、ヤマト王権との関係を軸に論じられることが多い古墳時代研究に新たな視点を示す。
コシの地域社会と古墳の展開、その特質について、①地理的環境と自然環境、②気候変動と集団移住、社会変革、③ヤマト王権の施策と環境の変化、④地域間関係、⑤日本海沿岸交通、⑥ヤマト王権と地域社会といった観点から総括する。
小黒智久(おぐろ ともひさ)
1973年 新潟県生まれ。以後、神奈川県・栃木県で育つ
1996年 新潟大学人文学部文化課程卒業
1998年 新潟大学大学院人文科学研究科日本・東洋文化専攻(修士課程)修了
1998年 富山市役所入庁(教育委員会生涯学習課学芸員)
以後、 富山市教育委員会埋蔵文化財センター学芸員(この間、富山市考古資料館学芸員、富山市日本海文化研究所学芸員を兼務)、富山市郷土博物館館長代理、富山市民俗民芸村管理センター村長代理を経て、現在、富山市民俗民芸村管理センター主幹学芸員(富山市考古資料館主幹学芸員を兼務)
2022年 博士(歴史学)
〈主要論著〉
「倭における有機質製帽冠の系譜とその展開」『考古学研究』第57巻第1号 考古学研究会 2010年
「5世紀の古墳から文化交流を考える 北陸地方の様相」『文化の十字路 信州』日本考古学協会2013年度長野大会実行委員会 2013年
「新潟県佐渡市台ヶ鼻古墳石室の再検討」『古代学研究』第202号 古代学研究会 2014年
「北陸北東部の古墳出現期社会と地域間関係、気候変動」『古代文化』第69巻第2号 (公財)古代学協会 2017年
『古墳時代研究の現状と課題』上 古墳研究と地域史研究(共著 同成社) 2012年
『若狭と越の古墳時代』季刊考古学・別冊19(共著 雄山閣) 2013年
『古墳と続縄文文化』(共著 高志書院) 2014年
『積石塚大全』(共著 雄山閣) 2017年
『磨斧作針―橋本博文先生退職記念論集―』(共著 六一書房) 2019年
『横穴式石室の研究』(共著 同成社) 2020年
第Ⅰ部 本書の目的と視点、現状認識
序章 本書の目的と現状認識
第1節 本書の目的と構成
第2節 古墳研究と考古学的地域史研究の動向
第3節 考古学的地域史研究の意義と目指すべき方向性
第1章 立論の前提
第1節 時間軸の設定と時代区分、時期区分
第2節 竪穴建物跡の埋没過程と遺跡形成
第3節 土器の編年研究の課題
第4節 富山湾岸域の古地理、コシの古気候
第Ⅱ部 考古学的地域史研究の実践
第2章 弥生時代後期~古墳時代前期のコシの地域社会
第1節 古墳出現期社会と地域間関係、気候変動
第2節 鉄器と鉄器製作
第3節 出現期古墳の諸相
第4節 前期古墳からみた首長間関係
第5節 北の古墳築造周縁域と続縄文文化
第3章 古墳時代中期のコシの地域社会
第1節 中期古墳からみた遠隔地との首長間関係
第2節 渡来系要素からみた古墳時代の若狭・コシ
第3節 飯綱山古墳群の歴史的意義と朝鮮半島系馬具の来歴
第4章 古墳時代後期のコシの地域社会
第1節 若狭・コシにおける横穴式石室の導入と埋葬観念
第2節 石室構築技術・技法からみた日本海沿岸交通と陸あがり
第3節 倭における有機質製帽冠の系譜とその展開
第5章 古墳時代終末期のコシの地域社会と高志国
第1節 コシの横穴系埋葬施設と高志国
第2節 上越における後期・終末期古墳の特質
第3節 中越における終末期古墳の特質
第Ⅲ部 結論と今後の研究課題、展望
終章 コシの地域社会と古墳の特質
第1節 コシの地域社会と古墳の展開、その特質
第2節 今後の考古学的地域史研究の展望