戦没学生という悲劇を繰り返さないこと、平和のために寄与することを活動の根幹に据えている「わだつみ会」。
「わだつみ会」のそれぞれの時期の活動内容や特徴などに焦点を当てることで、「戦争体験」がどう捉えられ、いかにして向き合われていったのかを描くとともに、戦後日本の歴史が、「戦争体験」を語り継ぐという行為にどのような影響を及ぼしていったのかを明らかにする。
那波 泰輔(なば・たいすけ)
1989年生まれ。
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。
現在、成蹊大学 社会調査士課程室 調査・実習指導助手。社会理論・動態研究所所員。
専攻分野:歴史社会学
主要業績
「ハチ公像が時代によってどのように表象されたのか――戦前と戦後以降のハチ公像を比較して」(『年報カルチュラル・スタディーズ』、vol.2、2014年)
「わだつみ会における加害者性の主題化の過程――一九八八年の規約改正に着目して」(『大原社会問題研究所雑誌』764号、2022年)
「「わだつみ」という〈環礁〉への航路:ミュージアム来館者調査から」(清水亮・白岩伸也・角田燎編『戦争のかけらを集めて――遠ざかる兵士たちと私たちの歴史実践』図書出版みぎわ, 2024年)
序 章 問題意識と先行研究、研究目的
一 問題意識の概要とテーマ
二 先行研究
三 分析視座
四 本書の方法と使用する資料
五 本書の構成
第一章 わだつみ会における「思想団体」の定義と変遷―「思想」の言葉に着目して
一 はじめに
二 第一次わだつみ会の成立と解散
三 第二次わだつみ会と「思想団体」という方向性
四 第三次わだつみ会における「思想団体」の拡張
五 おわりに
第二章 わだつみ会における加害者性の主題化の過程 一九八八年の規約改正に着目して
一 はじめに
二 第三次わだつみ会と一九七〇年代―「天皇問題」への着目
三 一九八〇年代のわだつみ会
四 おわりに
第三章 非戦争体験者による戦争体験者の戦争責任の追及―戦争責任を語るとはどういうことか
一 はじめに
二 わだつみ会への田口裕史の関わり
三 記述することと語ること
四 おわりに
第四章 わだつみのこえ記念館の設立過程と現在―繋ぐ場所としての記念館
一 はじめに
二 第一次わだつみ会と第二次わだつみ会における記念館構想
三 一九九〇年代における記念館構想
四 「わだつみのこえ記念館」設立へ
五 おわりに
終 章 結論と今後の課題
一 結論と得られた知見
二 今後の課題と展望