日本列島の古墳時代から中世まで、遺構・遺物などの考古資料や文献史料の中に東北アジア地域(中国東北部・朝鮮半島・ロシア沿海州など)の文化の痕跡を探求し、その伝播経路、受容の実態と変容の過程を追う。
※本書籍には新版がございます。
日本と古代東北アジアの文化 ― 地域社会における受容と変容 ―【普及版】
川崎 保 (かわさき たもつ)
1965 年 東京都三鷹市生まれ
1982 年 同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了
2018 年3 月 博士(文化史学)
現在 長野県埋蔵文化財センター 調査2 課長、長野大学非常勤講師
〈主要編著・論文〉
『縄文「ムラ」の考古学』(2006 年)
『「赤い土器のクニ」の考古学』(2008 年)
『「シナノ」の王墓の考古学』(2006 年)
『信濃国の考古学』(2007 年)
[以上編著:雄山閣]
『文化としての縄文土器型式』(2009 年)
『「縄文玉製品」の起源の研究』(2018 年)
[以上単著:雄山閣]
「縄文土器の形態と用途・機能の関係を探る」『古代探求 森浩一70 の疑問』
中央公論社 1998 年
「古墳時代の埴輪に見られる東北アジア文化の影響」(『沿海州の中世遺跡』2 号
2012 年)
〈翻訳〉
イブリエフ著「日本の文献史料を通してみたシャイギン城跡のパイザ」
(『古代学研究』175 号 2006 年 共訳)
姜 念思著「朝陽市黄河路唐墓出土靺鞨石俑考」(『博古研究』36 号 2008 年)
ヴォロビヨフ著『女真と金国の文化』ボロンテ 2018 年(共訳)
序
第一章 国家形成期 ― 古墳時代 ―
一 ハクチョウ形埴輪
1 はじめに ― 古代「鳥」文化の考古学的分析 ―
2 ハクチョウ形埴輪
3 小 結
二 埴輪にみる辮髪・送血涙・タカ
1 はじめに
2 井辺八幡山古墳出土の形象埴輪にみられる靺鞨・女真文化との共通性
3 小 結
三 鷹形須恵器
1 はじめに
2 鷹形須恵器
3 池崎窯跡
4 能登国分寺
5 渤海の「鷹」
6 「鷹」の尊崇
7 まとめ ― タカが示す邑知潟低地帯における東北アジア文化の影響 ―
四 シナノに来た東北アジアの狩猟文化
1 突如登場する猛禽や遊禽類の造形
2 ウマの文化と鷹狩、水鳥
3 東北アジアの文化が来た道
4 古代シナノの鷹狩
五 天皇陵をなぜミササギと呼ぶか
1 はじめに
2 ミササギの語源と意味
3 ササギの語源
4 ササギは本当にミソサザイか
5 墳墓と小鳥に関する伝承
6 考古学からみた古墳と小鳥 ― 埴輪における小鳥の造形 ―
7 まとめにかえて ― なぜ死んだ人が小鳥と化すように考えたか ―
六 力士形埴輪と古代東北アジア角抵力士像との対比と考察
1 はじめに
2 力士形埴輪について
3 北方系文化要素としてみた顔面線刻、髪型、葬送儀礼と相撲(角抵)力士
4 坊主頭の力士形埴輪
5 耳飾りをした力士形埴輪
6 小 結
第二章 古代律令国家期 ― 奈良・平安時代 ―
一 長野市篠ノ井方田塔の考古学的研究
1 はじめに
2 篠ノ井方田塔
3 方田塔をめぐる考古学的環境
4 渡来系氏族との関係
5 おわりに ― 方田塔の性格 ―
二 古代「善光寺」造営の背景
1 はじめに
2 善光寺瓦の考古学的検討
3 瓦からみた千曲川流域の古代寺院
4 考古学と古代文献からみた信濃国分寺
5 善光寺境内古代寺院の場合
6 古墳時代以降の信濃の渡来系氏族
7 まとめ
三 古代信濃の獣面文瓦について
1 はじめに
2 坂城町土井ノ入窯跡出土の獣面文瓦
3 獣面文瓦の研究史
4 地域における獣面文瓦の意義
5 おわりに
四 「禾」墨書土器に関する小考
1 はじめに
2 「禾」墨書土器の全国の類例
3 「禾」の意味
4 信濃の「禾」墨書土器の例
5 まとめ
五 信濃のオンドル状遺構についての一考察
1 はじめに
2 信濃のオンドル状遺構
3 東アジアのオンドル状遺構
4 オンドル状遺構と渡来系氏族
5 信濃のオンドル状遺構の起源
六 古代信濃の鉄鐸についての一考察
1 はじめに
2 研究史
3 鉄鐸の類型(年代と地域)
4 古代信濃の鉄鐸の分析
5 問題点の整理
6 まとめ
七 善光寺と諏訪信仰
1 はじめに
2 善光寺の中の神祇
3 善光寺の中の諏訪信仰
4 善光寺と諏訪信仰のかかわりとその意味
5 まとめ
第三章 連綿と続く交流 ― 鎌倉時代以降 ―
一 『吾妻鏡』異国船寺泊浦漂着記事の考古学的考察
1 はじめに
2 越後国寺泊浦漂着記事からみた日本と金・女真との関係
3 中世出土銭の分析 ― 金銭を中心に―
4 まとめ
二 北辺をこえた女真人
1 はじめに
2 女真文字が書かれた『吾妻鏡』銀簡とシャイギンの『銀牌』
3 女真文字の銀簡とその意味
4 シャイギン城塞遺跡出土の銀牌
5 遼金の金銀牌
6 異国船の目的
7 東夏国と中世日本 ― 北辺をこえた女真人 ―
三 「渤海」文字資料からみた女真文字の起源に関する一考察 ― ヴォヴィン論文を中心として ―
1 はじめに
2 ヴォヴィン論文「完顔希尹が女真文字を創作したのか」の概要
3 ヴォヴィン論文の文字の解釈について
4 従来の渤海や女真の文字研究との対比
5 まとめにかえて ― ヴォヴィン論文の意義 ―
四 遺跡からみた古代・中世の千曲川の水運
1 はじめに
2 文献からみた千曲川水系の水運
3 千曲川流域の遺跡
4 何を運搬したか、何が入ってきたか
5 遺跡から推測する古代の水運
6 まとめにかえて ― 文化の流入路としての水運 ―
結 なぜ日本に古代東北アジアの文化がみられるのか
引用・参考文献
図版・表出典
あとがき